「柔和な笑顔の優しき人…山野史人さん」

…ああ。

ボクは今、とても憂鬱だ。

…ああ。

しかし、やはり、糾弾しなければならない。

憎まなければならない。

やるしかない、
やるしかない。

そう心中で決心し、いざ稽古に向かう。…しかし、どうしても嫌いになれないのだ。どうしたら、いや、誰が嫌いになれるのだ、この柔和な笑顔の方を。つらい。胸が痛い。

山野さん扮する山川総長は、憎い。
私扮する橘記者には忸怩たる思いがあり、許し難き相手だ。

そう。

役柄に感情移入し、没入すれば、いくらでも憎める。

しかししかし、山川総長に扮している山野さんは、どうがんばっても憎めない。無理だ。

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だってだって…

この笑顔ですよ・

この笑顔でニコニコされたら、あなた、嫌いになんかなれますかってんですよ・

しかしながら私も役者の端くれ…そこは心を鬼にして、思いっきり憎んでやりますよ・

思いっきり糾弾してやりますよ・



ですから山野さん。
稽古中、及び公演中だけはその笑顔、ボクには向けないで下さい…

だってその笑顔を見たら…

あなたを憎めなくなってしまうからぁぁぁ・・・

蟹江一平
(写真:本読み中の蟹江一平)