1983年にドキュメンタリー映画製作にあたり寄稿された水上勉さんの文章をご紹介していきます。
長文の為、何日間かに分けて記載します。
故郷 若狭について書かれている文章です。



「原発の若狭のこと」その1

 故郷若狭のことを、友人たちは「原発銀座の」あるいは「原発密集の」といういい方で、私に質問する。
「どうしてあんたのところだけ、あんなに原発が集まっているのかね」

 ・・・故郷を出て54年。
9歳から捨てた故郷だが、その故郷を舞台にした小説をいくつも書いてきたので、親しい友人は、私のことを若狭人だという。光栄である。そしてきみの故郷は不幸だな、という原発をもたぬ故郷を自慢する友人に、私はこう答える。
 
「きみの県には原発はないが、水力発電所はあるね。その水力も揚水なら、若狭の電気が夜なかにおくられて水を揚げている。いまや水力も原発の余剰電力をつかって、送水路が節約出来、たまり水だけつくれば、そこに発電所ができる時代だ・・・」

 友人はけげんな顔をする。その顔へいうてやる。

「きみの細君はボタンを押して湯をわかしていないか。めしも風呂もボタンを押して火をつけて焚くか煮るかしてないか。きみはマンション生活だというなら、昼でも一千万の東京人が、みなそんな生活だ。やっぱり原発を辺境につくらせる者の仲間じゃないか」

 友人はやるせない顔をしてだまるのである。正直いって、このテの反原発論者の友人を私は周囲に何人も見つけることができる。のんきな平穏主義者めッ。若狭の農漁民の苦しみ喘いで生きている血汗の百分の一でも嗅いでみたまえ。もう少し、日頃の電気の使い方が、ちがってきようというものだ。


その2へ続く



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