1983年にドキュメンタリー映画製作にあたり寄稿された水上勉さんの文章をご紹介していきます。
長文の為、何日間かに分けて記載します。
故郷 若狭について書かれている文章です。


「原発の若狭のこと」その3

若狭は人の子を都会という戦場に弾丸のように送ってきた国だという考えが消えないそうである。

ところが、原発がきて、やっとのことで、都市と同格になった気もする、
というこの教師あがりの人の、シニカルな微笑に出あうと、あいかわらず若狭が、明治、大正期と同じように都会へエネルギーを送りつづけていることにかわりない運命を見る思いだ。

人間が電気に代っただけのことである。
しかも、その電気は、原子力で起きる発電所だ。

 なぜ、当番政府を主導した宰相たちや大臣のいちばん多かった山口県に原発がなくて、
大臣がまだひとりも出たことのない若狭に、
原発が密集するのだろう、とその教師あがりの人は、
シニカルな笑い口をとじて、苦虫をつぶしたような眼になり、

「わたしたち、教育者が、そういう人材を育てなかったことが、理由かもしれないね」というのだった。

そういう理由とは何か、と問えば、

「人のいやがるものを集めてしまうことを拒否する政治家をですよ」と彼はこたえた。

 私はそういう老教師が谷々にひそんで、歎息しながら

「生きている故郷を愛するのである。」

そうだ、その教師あがりの人がいうように、若狭はあまりにも原発が集まりすぎる。


その4へ続く・・・


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