劇団青年座第245回公演『アルビオン-白亜の地イングランド』
作=マイク・バートレット 翻訳=小田島則子 演出=伊藤大

劇団青年座公演『アルビオン-白亜の地イングランド』5月21日から30日まで六本木の俳優座劇場で上演! 
稽古は着々と進んでおります!
本作品をより楽しんで頂くために、前回公演よりスタートしました企画

劇団員が深掘りインタビュー!!

全3回でお届けします小田島則子さんへのインタビュー第2回目です!
今回は翻訳のご苦労や海外戯曲シリーズのお話など盛りだくさんです!!

是非読んでみてください〜
(劇団員の佐野美幸がインタビューを担当します)
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佐 野:今回の『アルビオン』は、則子さんお一人での翻訳ですが、共訳の時とはどんな違いがあるのでしょうか?

小田島:二人でやるときは家でディスカッションができるので、まあ一人でじっと考えているよりは自信が持てるところがありますね。

佐 野:共訳をする中で、お二人での分担はあるのですか?

小田島:私の方がキーボードを打つのが早いので、私が最初にさーっと訳して、その原稿に恒志が手を入れて私に戻し、私がもう一度チェックして、ああだこうだと言い合いながらやっていくので読み間違いが少なくなりますね。最初にこうだと思って読んじゃうと修正が効かない時があるんですよ。単語の読み間違えもあったりして…。
今回も読み合わせの時に、演出の伊藤さんに誤訳を指摘して頂いたり、俳優さんたちが質問してくださったり、台本にする前にも制作やスタッフの方々から「ここはどういうことなんですか」と言って頂いたりして。青年座さんだと一人でもいけるかもしれないと思ったのは、そんなふうに皆さんが声に出してくださるから。間違いに気がついたり、勝手な思い込みで私以外の人には通じにくい日本語だとわかったりするので助かります。
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佐 野:先日、『アルビオン』の稽古初日の読み合わせに参加していただきました。私たち役者は、作品の役柄に出会ってから、その役に入り込んでいく作業をしていくんですが、初めて読み合わせを聞いた時はどんなことをお感じになるんですか?

小田島:稽古初日の読み合わせの日は、幕が開く初日よりも緊張します。翻訳する時、どういう風に響くんだろうと思って何度も何度も声に出して読んでいるのですが、先日も稽古初日に伺って、ようやく戯曲の世界が見えました。違いますね、役者さんの声で読んでいただくと。すでにその段階で3次元になっている。自分でやっていると、どうしても本の上だけなんです。ひたすら文字と格闘しているので平面の世界からなかなか抜け出せない。それが、役者さんが声を出すとふわっと立ち上がるんです、情景が。

佐 野:青年座は、小田島さんご夫妻にいろいろな戯曲の試訳も含めてご紹介もいただいています。私達があまり海外戯曲にアンテナを張れていないので、本当にありがたいです。

小田島:我が家としても、いつもいつもアンテナを張っているわけではないですよ。声をかけていただくと一所懸命に劇評を読んでみたりして、こんなのがあった、あんなのがあったと、面白くなってきます。

佐 野:『アルビオン』を青年座に薦めてくださったのは?

小田島:演出の伊藤さんからブレグジットに関する戯曲はないですか?と相談されました。ちょうどトランプ政権誕生の頃で、アメリカ、イギリス両方ともポピュリズムで自国主義に傾いて、先進国が右へ右へと行く世の中になっていた時に、アメリカに『SWEAT』というすごい戯曲がありました。じゃあイギリスの方はどうなの? と懸命に探して一つ二つあったのですが、まさに舞台上でブレグジットを論じていて面白くないんですよ。イギリス人が観るなら面白いんだろうけど、私たちがやって何か訴えるものが出てくるかな? と保留になっていました。実はその時『アルビオン』も読んでいたのに、ピンとくるものがなく、何を訴えているのかよく解らず、そのままにしてしまっていて。でも、チェ−ホフと同じようなことが作中で起きていることに気づいてもう一度読んでみると、世の中の問題を率直に訴えるというよりも、その人その人の、今の人生や生き様を普通に描いていて、その中に世の中が入り込んでいるという構造に気が付いて、とても面白いということがわかりました。そして伊藤さんに「これは面白い!」とお薦めしました。
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佐 野:青年座は創立以来、数々の創作劇を上演している劇団なのですが、海外の現代戯曲と出会うには翻訳家の方の「橋渡し」が必要で、それがとても有り難いことだなって。

小田島:そう言って頂けると嬉しいです。恒志がよく言うことですが、「戯曲の翻訳は他人のふんどしを借りても相撲が取れないような仕事だ」って。翻訳の仕事は、ここにあるものをこっちに渡すだけの役割なので。

佐 野:言葉の使い方とかに翻訳家の個性が出ませんか?

小田島:出てきますね〜。好きな言葉遣いとかありますし。また翻訳家の個性だけじゃなくて、その人が生きてきた時代、教育を受けた時代、育ってきた環境の中で入ってきた日本語が出てきますよね。そして、あとは想像力かな。いわゆるfuckingみたいな言葉をそのまま日本語にしている方もいらっしゃいますし。私自身はそういう言葉は時々使うのはアクセントになっていいかなと思うんですけど、『SWEAT』のときにはそれがあまりに多くて。一つの単語の間にそれをわざわざ言う?みたいな入り方をしていたりで。これはもう乱暴な言い回しをしているだけなので…。

佐 野:則子さんは、ふだん乱暴な言葉をお使いになりませんよね。

小田島:そうなんですよ、外では、ね。こんな言葉を使うと、こちらの人格が疑われちゃうんじゃないかと思うこともあったりしますが、原文にそう書いてあるんだからしょうがない。

佐 野:そうですか。やはり人によって違いはあるんですね。劇作家が描く世界を壊しちゃいけないし、でも日本語としてわかる世界に書き直さないといけないし…。だからこそ面白いお仕事なんでしょうね。
国によって戯曲の特徴があると思うんですけど、例えば、同じ英語でもアメリカ戯曲とイギリス戯曲の違いってあるのですか?

小田島:アメリカの戯曲は最後に希望を見せるのが好きかな。もちろん、そうじゃないのもありますけど。イギリスの戯曲は、希望がどこかにはあるけれども、別にハッピーエンドではない。ただ…ハッピーエンドってなんでしょうね。だって王子様とお姫様が結婚したって、その後の生活が大変だろうって…(笑)。それを残すのがイギリスの戯曲のような気がします。

(最終回に続く)
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「アルビオン」を青年座にお薦めくださったお話、翻訳のお仕事の持つ奥深さ・・・、貴重なお話をお聞かせいただきました。

さて、次回は最終回です!!
留学中のお話や小田島さんのプライベートをお届けします!
お見逃しなく!!

公演情報はこちら↓

『アルビオン-白亜の地イングランド』
2021年5月21日(金)〜30日(日) 俳優座劇場
http://seinenza.com/performance/public/245.html