劇団青年座第249回公演
『燐光のイルカたち』
作=ピンク地底人3号 演出=宮田慶子


ピンク地底人3号さんの新作書き下ろし作品「燐光のイルカたち」が、いよいよ中野ザ・ポケットにて始まります。

今回は公演の裏方、音声ガイドサービスを担当をする劇団員の藤井佳代子さんにお話しを伺いました。(聞き手:黒崎照)

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―音声ガイドサービスとはどういうものですか?

主に視覚障害がある方に、演劇をもっと楽しんでいただくための言葉によるガイドです。
まず、開演前に装置や衣裳、その他知っておくとより理解が深まる情報などを事前に説明します。上演中は俳優の行動・表情、照明、シーンが変わるところなどの視覚情報をライブで説明していきます。演出意図を汲みながら、必要な情報を、短い言葉でイマジネーションを持って伝えることは音声ガイドの仕事として楽しいところでもあります。
青年座では、事前にご予約いただいたお客様に受付で受信機をお渡しし、イヤホンを通して聞いていただきます。(※指定日のみ)


―解説付きの演劇、視覚障害をお持ちの方のみならず、ぜひ一度体験してみたいですね。どのような準備をされるんでしょう?

通し稽古を見て、上演中にガイドを入れる箇所を確認します。また、演出意図を考えながら、必要とされる情報は何か探っていきます。装置の図面や模型で舞台セットを、衣裳・小道具などは実物や写真で、確認します。そして本番仕様の舞台稽古(ゲネプロ)で新たに立ち上がってきたものを見て、修正を行います。ゲネプロは本番の前日や当日に行われるのでいつも時間との戦いです。そして時間の許す限り練習をします。
また、状況によっては本番当日利用されるお客様を駅から劇場までご案内したり、終演後にお送りしたりといった介助業務も行います。

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―青年座では視覚障害の方向けの音声ガイドの取り組みを始めて1年ほどになりますが、藤井さんはそれ以前の2021年3月から「舞台ナビlamp」での活動を通して音声ガイド制作を継続的に続けて来られました。大変なことも多い中、なぜ精力的に活動されているのでしょう?

楽しいからです。今まで自分がやってきたことすべてが、この仕事に活かされることを実感しています。音声ガイドを実際に利用した全盲の方から「『砂漠』って言われて、その瞬間に、自分も渇いた砂漠にいるように、熱や暑さも感じた」と感想をいただいたとき、自分がこうありたいと、信じてやって来たことが報われた気がして、嬉しかったです。みんな演劇を楽しみたいのです。そのお手伝いが出来ることにとてもやりがいを感じています。
障害のある方だけでなく、より広く「音声ガイドを聞いたら、もっと芝居が楽しめた」と言って頂けるように、取り組んでいます。


―今後、この活動が劇団としてどのように展開していったら良いと思いますか?

音声ガイド利用者の方が実際にどのような困りごとがあるのかを共有して劇団全体で障害のある方に対しwelcomeの姿勢を持つこと。劇団員の誰に言っても対応できるようになりたいです。私自身も含めて、もっと気軽に当たり前に出来るように。


―ノウハウを学ばれた後に、日常場面でも白杖をお持ちの方へ電車乗車の誘導をされたそうですね。学んで、実際に関わっていけば、より広くたくさんの方に演劇を楽しんでいただけるようになるのではないかと感じました。
最後に、「燐光のイルカたち」をお読みになってのご感想をお願いします。

すごく面白いな、いい戯曲に出会ったなと思いました。国と国の分断を描きながら、あくまで、その中に生きる人間(真守)の生を描きたいのだと感じました。個人にとっての「真実」とは何かという問いも感じました。同じフィクションを紡ぐ芸術に携わる者として、感じるものがありました。
観る人によって、様々なメッセージを受けとることが出来る、器の大きな普遍性のある作品だと思います。


―本日はありがとうございました。

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劇団青年座 第249回公演
燐光のイルカたち
2022年9月23日(金)〜10月2日(日)
会場:ザ・ポケット
【音声ガイド付き公演日程】※要予約
9月29日14時開演 …ガイドナレーター:尾身美詞
10月1日14時開演 …ガイドナレーター:藤井佳代子

【鑑賞サポート舞台ナビLAMP】
台本事前貸出・受付での筆談対応・車いす対応・介助者1名無料
※事前に劇団にご連絡の上、ご利用ください。