劇団青年座第254回公演
『ぼっちりばぁの世界』
作=竹田モモコ 演出=磯村純
2月15日(木)〜25日(日)@ザ・ポケット
青年座初登場の竹田モモコさんにインタビュー後編!
聞き手を務めますのは、前編に続き劇団員の石母田史朗(いしもだしろう)です。
(竹田モモコ氏)
ちょうど方言の話が出たのですが、方言にこだわる理由というのは何かあるのですか。
そうですね・・・。「ばぶれるりぐる」を旗揚げしたのが6年前になるのですが、何か特徴を付けないと、全国には数多くの劇団があるから何も印象に残らない。そんな思いがありました。方言を使った方がお客様に何かしら引っ掛かってもらえるのではないかと。何でもいいので興味を持ってもらえないと作品の良し悪しを見て貰うところまでいかないなと思ったんです。また、公演活動の拠点は基本が大阪と東京なので、方言を使うと100%はお客様に伝わらないんですよね。逆に、それを利用してストレートに表現したくない時に、紗幕※2代わりに使うことができるんです。ちょっと何を言っているのか分からないけど、怒っているニュアンスだけは伝わってくる。言い方はおかしいのですが表現を自分で操作できるので便利だと思っています。高知県や土佐清水市で公演した時は全く紗幕の役割りを果たしていないこともありましたが・・・。
紗幕の話は分かる気がします。ところで「ばぶれるりぐる」を旗揚げしたきっかけは何だったのでしょうか。
私は元々、大阪で「売込隊ビーム」※3っていう劇団に入ってたんですね。その後、劇団をやめてしばらくフリーとして活動していましたが、実は一度すごく嫌になって役者をやめたんです。お芝居から離れて何もせずぽっかり空いた時期がありました。そのまま普通の人生に軌道修正しようとしたんです。ただ、普通の人生を歩もうと新しい生活を始めてみたものの具合が悪くなってしまって・・・。心のバランスが崩れてしまったんですね。それで、どうしたものかと思い、占いに行ってみたんです。その時に占い師が、「これは占いじゃなくて個人の意見なんだけど、あなたは何かを始めないとあともうちょっとで鬱になるわよ。何でもいいから始めたら?」と言われて・・・。私、占い師の言葉に共感したんです。鬱になることをものすごく恐れていたんですよね。そこに足を踏み入れたら癖になりそうな感覚があって、何とか回避したい。そのためにはもう一度お芝居をするしかないかと。それに今まで演劇をやっていたけど、やり切れていない感じもありましたし。ただ、一度やめたのにまた戻ることは本当に嫌だったんです。役者じゃ売れないというのは何となく自分の中では思っていて。とにかく自分の力を全部出し切ろうと思い、自分で劇作をすることにして、自分の自由にやれるように旗揚げしました。でも全部しんどいです。本を書くのもしんどいし、人を束ねるのも苦手なのでしんどい。ただ、それでも演劇をしないよりは気持ちが楽だなと思っています。演劇をやるのもしんどいけど、やらないのもしんどい。だから旗揚げした最初はもう一回頑張ろうという前向きな気持ちではなく、鬱になることを回避するために戻ってきました。
とても貴重なお話ありがとうございます。それではいよいよ2月15日から始まります『ぼっちりばぁの世界』をご観劇いただくお客様に向けて、メッセージをいただけますか?
そうですね・・・。自分にとって「ちょうどの世界」って絶対どこにもなくて、どこか妥協したり、自分を伸び縮みさせて環境にはめないといけない。皆さんそうしているのでしょうが、それってなかなか大変なことですよね。ただ、それは自分だけが苦しいわけではなく、周りにもしんどいなと感じている人はいて。何か自分が落ち込んだり上手くいかない時に、ポジティブなものや綺麗なものを見て救われるより、自分と同じ境遇や同じ苦しみを持っている人を見た方が元気が出ることって多少あるような気がするんです。自分でも性格悪いなぁと思うんですが、そういうことってあると思います。あまり救いにはならないかもしれませんが、自分だけじゃなくて、みんなそれぞれの地獄にいて、生きているとしんどいことはあるよって提示していけたらいいなと思っています。
では、最後に『ぼっちりばぁの世界』と同時期に「ばぶれるりぐる」の公演が東京で上演されますよね。そちらについても一言お願いします。
2月22日(木)から25日(日)までこまばアゴラ劇場で『川にはとうぜんはしがある』※4
という作品を上演します。こちらは家族…家族というか、母と子の話ですね。子供がちょうど家を巣立つくらいの年齢、19、20歳ぐらいで家を出ていく、その時に役割が変わるじゃないですか。お母さんは普通の女性になるし、自分の手を離れるってことは、子供ももう大人になるし、関係が今までの関係じゃなくなる時の家族の一年間を定点観測するお話です。お母さんも本来の自分が好きなことを思い出していかないと、これからの人生も長いし、子供もお母さんが思い描く人生ではなく、自分が思い描く人生にしていかなければならない。家族の色んな想いが交錯する一年間のお話です。
竹田さんもご出演されるんですよね。とても楽しみです。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
※2 紗幕
紗のような薄い布地で作られた幕。照明の位置により幕の内側が見えたり見えなかったりするので、演劇の舞台などに用いられる。
※3 売込隊ビーム
1996年、大阪芸術大学在学中に旗揚げ。突飛な状況設定を、気の利いたトリックと巧みなウソででっち上げ、鋭くもとっつきやすい会話劇を展開。2011年より充電期間中。
※4 『川にはとうぜんはしがある』
ばぶれるりぐる第5回公演
脚本=竹田モモコ 演出=チャーハン・ラモーン
2月22日(木)〜25日(日) こまばアゴラ劇場
公演情報はこちら↓
『ぼっちりばぁの世界』
2024年2月25日(木)〜25日(日) ザ・ポケット(中野)
https://www.seinenza.com/information/detail/id=341
『ぼっちりばぁの世界』
作=竹田モモコ 演出=磯村純
2月15日(木)〜25日(日)@ザ・ポケット
青年座初登場の竹田モモコさんにインタビュー後編!
聞き手を務めますのは、前編に続き劇団員の石母田史朗(いしもだしろう)です。
(竹田モモコ氏)
ちょうど方言の話が出たのですが、方言にこだわる理由というのは何かあるのですか。
そうですね・・・。「ばぶれるりぐる」を旗揚げしたのが6年前になるのですが、何か特徴を付けないと、全国には数多くの劇団があるから何も印象に残らない。そんな思いがありました。方言を使った方がお客様に何かしら引っ掛かってもらえるのではないかと。何でもいいので興味を持ってもらえないと作品の良し悪しを見て貰うところまでいかないなと思ったんです。また、公演活動の拠点は基本が大阪と東京なので、方言を使うと100%はお客様に伝わらないんですよね。逆に、それを利用してストレートに表現したくない時に、紗幕※2代わりに使うことができるんです。ちょっと何を言っているのか分からないけど、怒っているニュアンスだけは伝わってくる。言い方はおかしいのですが表現を自分で操作できるので便利だと思っています。高知県や土佐清水市で公演した時は全く紗幕の役割りを果たしていないこともありましたが・・・。
紗幕の話は分かる気がします。ところで「ばぶれるりぐる」を旗揚げしたきっかけは何だったのでしょうか。
私は元々、大阪で「売込隊ビーム」※3っていう劇団に入ってたんですね。その後、劇団をやめてしばらくフリーとして活動していましたが、実は一度すごく嫌になって役者をやめたんです。お芝居から離れて何もせずぽっかり空いた時期がありました。そのまま普通の人生に軌道修正しようとしたんです。ただ、普通の人生を歩もうと新しい生活を始めてみたものの具合が悪くなってしまって・・・。心のバランスが崩れてしまったんですね。それで、どうしたものかと思い、占いに行ってみたんです。その時に占い師が、「これは占いじゃなくて個人の意見なんだけど、あなたは何かを始めないとあともうちょっとで鬱になるわよ。何でもいいから始めたら?」と言われて・・・。私、占い師の言葉に共感したんです。鬱になることをものすごく恐れていたんですよね。そこに足を踏み入れたら癖になりそうな感覚があって、何とか回避したい。そのためにはもう一度お芝居をするしかないかと。それに今まで演劇をやっていたけど、やり切れていない感じもありましたし。ただ、一度やめたのにまた戻ることは本当に嫌だったんです。役者じゃ売れないというのは何となく自分の中では思っていて。とにかく自分の力を全部出し切ろうと思い、自分で劇作をすることにして、自分の自由にやれるように旗揚げしました。でも全部しんどいです。本を書くのもしんどいし、人を束ねるのも苦手なのでしんどい。ただ、それでも演劇をしないよりは気持ちが楽だなと思っています。演劇をやるのもしんどいけど、やらないのもしんどい。だから旗揚げした最初はもう一回頑張ろうという前向きな気持ちではなく、鬱になることを回避するために戻ってきました。
とても貴重なお話ありがとうございます。それではいよいよ2月15日から始まります『ぼっちりばぁの世界』をご観劇いただくお客様に向けて、メッセージをいただけますか?
そうですね・・・。自分にとって「ちょうどの世界」って絶対どこにもなくて、どこか妥協したり、自分を伸び縮みさせて環境にはめないといけない。皆さんそうしているのでしょうが、それってなかなか大変なことですよね。ただ、それは自分だけが苦しいわけではなく、周りにもしんどいなと感じている人はいて。何か自分が落ち込んだり上手くいかない時に、ポジティブなものや綺麗なものを見て救われるより、自分と同じ境遇や同じ苦しみを持っている人を見た方が元気が出ることって多少あるような気がするんです。自分でも性格悪いなぁと思うんですが、そういうことってあると思います。あまり救いにはならないかもしれませんが、自分だけじゃなくて、みんなそれぞれの地獄にいて、生きているとしんどいことはあるよって提示していけたらいいなと思っています。
では、最後に『ぼっちりばぁの世界』と同時期に「ばぶれるりぐる」の公演が東京で上演されますよね。そちらについても一言お願いします。
2月22日(木)から25日(日)までこまばアゴラ劇場で『川にはとうぜんはしがある』※4
という作品を上演します。こちらは家族…家族というか、母と子の話ですね。子供がちょうど家を巣立つくらいの年齢、19、20歳ぐらいで家を出ていく、その時に役割が変わるじゃないですか。お母さんは普通の女性になるし、自分の手を離れるってことは、子供ももう大人になるし、関係が今までの関係じゃなくなる時の家族の一年間を定点観測するお話です。お母さんも本来の自分が好きなことを思い出していかないと、これからの人生も長いし、子供もお母さんが思い描く人生ではなく、自分が思い描く人生にしていかなければならない。家族の色んな想いが交錯する一年間のお話です。
竹田さんもご出演されるんですよね。とても楽しみです。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
※2 紗幕
紗のような薄い布地で作られた幕。照明の位置により幕の内側が見えたり見えなかったりするので、演劇の舞台などに用いられる。
※3 売込隊ビーム
1996年、大阪芸術大学在学中に旗揚げ。突飛な状況設定を、気の利いたトリックと巧みなウソででっち上げ、鋭くもとっつきやすい会話劇を展開。2011年より充電期間中。
※4 『川にはとうぜんはしがある』
ばぶれるりぐる第5回公演
脚本=竹田モモコ 演出=チャーハン・ラモーン
2月22日(木)〜25日(日) こまばアゴラ劇場
公演情報はこちら↓
『ぼっちりばぁの世界』
2024年2月25日(木)〜25日(日) ザ・ポケット(中野)
https://www.seinenza.com/information/detail/id=341