小暮：戦争中の報道についてお聞きしましたが、テレビや新聞以外にインターネットからも情報を得ることができる今の報道についてはどうですか？
黒岩：インターネットやSNSを使って大きな波を起こすことができちゃったりするじゃない。そこには真偽不明のニュースが溢れていて、その中にあって事実を見極める目を持つっていうことを問われているっていう変な時代だね。
小暮：ニュースソースが少なくて限られた情報しかない昔よりも、誰もがニュースを発信できる今の方が複雑ですよね。
黒岩：（アメリカの）トランプ大統領なんかは、事実を伝えるっていう本来の報道機関の役割を持ったAP通信を排除して、自分たちに都合のいいニュースだけを流すフォックステレビだけ取材を許すみたいなことをやってる。それってダメだよね。誰も言わないけど、(ナチス政権で)ヒトラーがやってたことと同じだから。20世紀の大戦前の状況に、なんか戻ってるって感じがするのね。
小暮：第二次世界大戦の反省もあって、政府は、良いことも悪いことも情報は閉鎖せずにオープンにしようとした数十年があって、そういった矜持を持って国のリーダーになっているのかなって思ってたんですけど、トランプみたいな自国の利益のために情報を操作する人が出てきた。
黒岩：その方が選挙で票が集まる。例えば、ウクライナにものすごい額の軍事援助している。それはアメリカが大事にしていた自由と民主主義を守るための軍事援助だったりするんだけど、それはアメリカ国民にとって利益にならない無駄なことだっていう空気を作り出すんだよね。
小暮：他の国はどうなんでしょう。
黒岩：中国なんかは国の体制を維持するために情報統制しているよね。今は経済的な豊かさがあるから国民は我慢してても、経済が失速した状況になった時はやっぱり不満が出ることになる。だから中国共産党は、国内の不満に対しては絶えず恐れてるんだよね。やっぱり天安門事件の記憶っていうのがあるから。まあ中国国内では天安門事件に関しては何の報道もしないし、学校では教えもしないし、インターネットで検索しても出ないことになってる。
また一国二制度であったはずの香港も国家安全維持法によって報道や言論の自由が大きく制限された。それは普通おかしいだろう、でもおかしいって言った時に、その人は消えていくのかもしれない。
小暮：民主活動家のアグネス・チョウ(周庭)さんとか…
黒岩：彼女はカナダへの事実上の亡命だけど。あれだけ盛んだった民主化運動も国安法が施行されてから誰も何も言わなくなったのは恐ろしいことだよ。そういうことが現実にあるんだよね。香港に住んでる人はどんな感じなんだろう。怖いと思うよ。でも怖いんだけど、その環境に馴染んちゃうしか…
小暮：そうですね。自分たちの主義を抑えれば生活できるってことなのかもしれない。
黒岩：生活が貧しいとまた違うんだろうね。そのために中国共産党はありとあらゆる手を使って豊かさを香港や国民に提供しなきゃいけないだよね。
小暮：今も本当にちょっとですが、第二次世界大戦前と変わらない空気感がありますよね。
黒岩：あるといえばあるっていう感じがするね。世界的にもね、日本的にもね。

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劇団青年座第253回公演
『同盟通信』
作＝古川健　演出＝黒岩亮
4月18日(金)〜4月22日(火)
恵比寿・エコー劇場

劇場にて心よりお待ちしております！