
まもなく、初日を迎える『ハード・プロブレム』。
劇団青年座「海外現代戯曲シリーズ」の第9弾として上演される本作。
出演の那須凜さん、久留飛雄己さん、横堀悦夫さんに作品の魅力を語っていただきました!
――戯曲を読んだ時の印象を教えてください。
那須 最初に読んだ時は、本当に難しくてできるのかなって印象はすごくありましたね。
横堀 俺も本当に難しいなっていう印象だったかなあ。
那須 てことはやっぱり「ハード」な印象だったってことで大丈夫ですか?(笑)
一同 笑い
久留飛 僕も最初に読んだ時はチンプンカンプンで、全然掴めなかったですね。 企画の段階で、凜からスパイクっていう難しい役があるんだけどって聞いていて、 その時は自分が出ることを知らなかったんです。
それで蓋を開けてみたらスパイクで。(笑)
「この役はあんたでも無理だと思うよ」みたいなことを決まる前に言われてて、 無理やん!ってなってましたね。(笑)
横堀 そんなことないよ。(笑)
那須 そんなことないんだけど、そんなこと言ってる私がひどいね。(笑)
横堀 でもそれはほら、同期のいじりだよ。(笑)
だって今この時点でスパイクを久留飛以外に誰がやれるの。
那須 本当にそう思います。
久留飛 いやいや。(笑)
那須 特にこの本は読むだけじゃどういう人間か理解するの時間がかかるじゃないですか。
読んでいくうちに自分の思っているような役ではないなっていう
齟齬が出てくるから、 ある種それは演じる役者によって左右される感じがありますよね。
だからもう今のスパイクは、久留飛さんにしかできませんよ。
横堀 そうだね。やっぱり肉体を通して見た時の久留飛のスパイクの在り方は…
久留飛 やめてくださいよ。(笑)いやもっと、いますよ誰か。(笑)
那須 でもやっぱり久留飛の天然の部分が、スパイクにすごく愛らしさを与えてますよね。
横堀 うーん、なんだろうね。憎めないウザさ。
那須 だからやる人によっては、本当にスパイクのことを大嫌いになる人もいるんじゃない かなと思います。
久留飛 台詞はだいぶ酷いこと言ってるもんね。
那須 そうだね。でもアホらしかったり、ふざけてたりする瞬間があるから、 憎めないんだよね。 でも最初芝居する時すごいカッコつけてたんだけど、 菜乃英さんに「もっとウザいやつでいい」って言われてからはね?
久留飛 ぱっと読んだら頭が良いし、言葉がばーっと出てくるっていうのがあると、 そういうカッコよさってあるじゃないですか。
一般的な最初のイメージをやっぱり持っちゃうのはあったかもしれないです。
――稽古はいかが進行中ですか?
横堀 一般的なイメージからいかに逸脱するかの稽古が難しかったね。
久留飛 今日なんてもう横堀さんが水を得た魚のように。
すごかったですよね。
横堀 でも本当の話、言葉に終始してしまったら、 ただ台詞覚えて言ってるだけじゃんて思っちゃってさ、何やってんだ横堀、 とか思ってたんだよ。
さっき凜が言ったように、人によってやりようがたくさんある と思うんだよね。それで横堀がやるんだったらどうするんだよって 客観的な自分に言われてさ。じゃあどうするんだ自分はと。
今でも悩んでるけどね。
那須 でも面白いのは、横堀さんは今日の稽古ですら全然違うキャラクターを入れてきてる し、すごいですよね。先輩が小屋入り直前になっても、別のものを繰り出してくるっ ていうのを感じると、まとまってきたねって安心してる場合じゃないなって 思いますよ。
横堀 でもそれは劇団だからできることだよね。
那須 そうですね。それでいうと、演出家の菜乃英さんに感謝したいのは、 演出家さんの方向性って絶対的なものがあるという感覚じゃないですか。 だからそこに大して別の考えを提案することって普通はできないと思うんですけど、 菜乃英さんに対してはそれができると言うか。
すごくディスカッションできる状態にあるんですよね。
久留飛 菜乃英さんはやっぱり凜のこと信頼してるんだなって 稽古見ていると伝わってきますよね。
横堀 それは思う。
久留飛 やっぱり凜が主役として、引っ張っていくというか、 この戯曲のあるべき方向というか、私はこう思うっていうものを 隠さずに出すと言うか。気になってることも皆んなにちゃんと伝えていくってことをやってきたからだと思いますけど。
横堀 舞台の上で凜はさ、迷ったり不安になることってあるの?
那須 なりますよ。もちろん。
横堀 それが見えないんだよ。舞台上で目を見てても、私は今日はこれですっていう、 不安には見えないんだよね。
那須 いや、めちゃめちゃあります。思ったような感情が来ないなってことも もちろんありますし、ちょっと今嘘ついたな、とか、 試したけど上手くいってないな、とか凄くありますね。
横堀 そういうのって同期だと久留飛は感じたりするの?
久留飛 いや感じないですね。
横堀 あ、そうなんだ。
那須 久留飛に関しては凄く感じますけどね。(笑)
横堀 久留飛は見ててわかる。(笑)
一同、笑い
久留飛 ある意味、分かりやすい役者ですから。(笑)
横堀 そこが可愛いというか、正直だなと思う。
久留飛 自信ないとき、自信ありませんっていう芝居しますからね。(笑)
横堀 2人のシーンが多いから、それは久留飛が自信ないのか、 スパイクが自信ないのかってときがあるんだよね。(笑)
でもスパイクにも(久留飛と)同じ要素があるよね。
那須 久留飛が自信なくても、お客さんにはスパイクが自信ないように見えるから絶対に。(笑)
久留飛 やれることは少しずつ増えてきてると思います。(笑)
そうなるとここ引っ掛けてみようかなとか、少しずつアイデアが生まれてくるというか。
でもダメ出しを意識して、消化しようとして相手が見えなくなった時があるんですけど、 そういう時に凜がグッと戻してくれるんですよ。
横堀 それはヒラリーとして?凜として?
久留飛 もちろんヒラリーとしてなんですけど、 「あんた今台詞に囚われてるだろ」 「こっち見なさい」って感じで引き戻してくれるんです。
横堀 かっこいいなあ、なんだそれ。
那須 久留飛だからできるんですよ。横堀さんはナマモノだから、 新鮮なうちにお召し上がりくださいって感じです。(笑)
横堀 ナマモノって。(笑)俺腐りやすいのか。(笑)
久留飛 長持ちしない。(笑)
横堀 そう長持ちしないの。やってるうち飽きちゃうから自分に。(笑)
那須 横堀さんが自分に自分で飽きてるのが分かるから、面白いんですよ。 飽きたから変えてきたなっていうのは凄く伝わるし、それに触発されて自分も変えた くなっちゃうんですよ。
久留飛 2人のシーンは、その日によって、毎回新作。みたいな。 見てるのは凄く楽しいですね。
横堀 うん、だから太いよなあと思って。凜は。絶対迷いがないもんね目線に。 私は今こう思ってますっていう。
那須 それあんまり良いことじゃないんじゃ?(笑)
横堀 いやいや、良いことなんだよ。役としてブレてないってことだから。
久留飛 うん、ブレてない。根も太いですよやっぱり。
那須 そんな、太いって言われても…(笑)
――本作『ハード・プロブレム』では、さまざまな立場の人物が登場しますが、皆さんがそれぞれ役に向かうにあたって最も大切にされていることは何ですか?
−久留飛さん、いかがですか?
久留飛 て変化を恐れないことですかね。 台本をパッと読んだ時に、スパイクの話している内容っ元々興味がある分野で、 話してることはすごく面白いなって思っていたんです。
でもそこに落とし穴があったなと。稽古の初期段階でそれを真面目にやりすぎていた ところが大分ありました。 彼には彼の世界の見え方がある、僕にはないスパイクの視点て何なんだろうと。
千秋楽まで探し続けたいと思っています。

−横堀さん、いかがですか?
横堀 難しい質問だなあ。(笑)
役に向かうというよりは、お客さんを想像するんだよね。
稽古をしていて途中から、俺を見ていて何が面白い?って視点に変わっていって、客観的な視点が気になってしょうがない。お客さんが見ていてフッと前のめりになる瞬間て何だろうって。見応えのある役者になっているかどうかっていうことを 凄く考えてしまうかなあ。
だから役の、というよりは、お客さんの目線を大切にしてるかな。

−凜さん、いかがですか?
那須 やっぱりヒラリーみたいな役をやる時には、自分の核となるもののみを大事に持っておくことですかね。 ヒラリーにとっての信念の部分というか。
どうやったらお客さんにヒラリーの感情を追っていってもらえるか、ということを考えた時に、私自身が生っぽく反応してないといけないなっていうのは、大事にしています。
見せ場を作ろうと思ったり、感情をガーっと上げようとしたり、 客観的な目線が強くなってしまう時があるんですけど、ヒラリーはあんまり やらない方が良いんだろうなっていうところと闘っています。 そこに気持ち悪さを感じていることが、ヒラリーにとっては正解なんだろうなって 思っています。 ナマモノでやる、感度を上げるってことを意識しています。
久留飛 逆に言うと、そうさせるために周りがきちんと仕事しなきゃいけないって ことでもあるもんね。
那須 …そんな「あたしのために頑張りなさいよ」みたいな。(笑)

一同、笑い。
横堀 でも芝居ってそういうもんだからね。
久留飛 うん、全く異論ない。
那須 今回はヒラリーって主人公の役だけど、私だって別の芝居の時には主役に何か影響を与えるために行動しようって思いますよ。
なので皆さん…お願いします。(笑)
一同、笑い。
――最後に皆さんへメッセージをお願いします!
久留飛 専門用語だったり、扱ってる題材が難しそうに感じると思いますが、 我々もそこを打破できるように稽古を重ねてきましたし、喋っていることの難しさなんてどうでも良くなるようなお芝居を目指して頑張っているので、 何を言っているのかわからない、ということを恐れずに観ていただけたらいいなと 思っております。
横堀 この芝居は、最後に人間だなって思わせてくれるので、 泣けると思います。きっと。それだけです。
那須 難しい言葉を使いながらも、人間の可笑しさ、愛おしさを凄く提示してくれる 作品です。そこを楽しんでもらえたらなと思いますし、専門用語が出てきて も、お客さんによって興味のある話題が変わると思うので、それについて終演後に 語り合っていただければと思います。
ぜひ観に来てください!

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劇団青年座第266回公演『ハード・プロブレム』
作=トム・ストッパード
翻訳=小田島創志
演出=金澤菜乃英
出演=
佐藤祐四
横堀悦夫
遠藤好
前田聖太
久留飛雄己
那須凜
市橋恵
角田萌果
万田千尋
小田島優月(劇団ひまわり)
日程・会場=
2026年9月5日(土)〜9月13日(日)
@吉祥寺シアター
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インタビュー/岡本大樹
文/石塚雄大