bbae8340.jpg9月25日より文化庁の在外研修員としてフランス・パリに留学中の大家仁志から最初の「巴里日記」が届きました。
本日より不定期に青年座HotNewsに掲載します。




2006年9月25日10:30分のエアーフランス機で日本を発つ。機体の車輪が成田に別れを告げる時、改めて350日はここに戻って来れないことを痛感させられる。が、銀翼はただただ滑らかに雲の上へと舞い上がった。仏蘭西へは北周りで露西亜上空を抜けて12時間の旅だ。地球と反対に周って行くから窓の外はずっと昼間だ。そう思ったら何だかとんでもないことをしようとしている気がする。そんなことを考えていたからか機内食が美味くない。もう日本食か日本の洋食が食いたい。仕方が無いのでビールでも飲みまくって寝てしまえと思ったが、席が窓際なのでいちいちトイレの度に気を使うので自粛する。自然眠れない。ならば景色でもと思ったが、翼の横でそれが眩しいだけ。映画も見たいのに限って字幕も吹き替えも無くて、おまけに前の金髪の大女は背もたれを倒したり起こしたりで…、あ〜昨夜も準備であまり寝てないのにこれじゃあ時差もへったくれも無くて、却って良いかもしれん、これも最初の試練かもしれん、などと馬鹿なこと考えていたら飛行機は独逸を越え着陸態勢に入る。だんだん地上がはっきりしてくる。初めての欧羅巴への着陸はかつて無い静かで滑らかなものだった。
仏蘭西は日本より7時間遅れているので12時間乗ったのにまだ16時、損したような得したような。ドゴール空港はでかい。さっきから飛行機が5km位、50キロ位の速度で走ってるんだけど、バスじゃないんだから!で、リムジンバスは急発進急停車を繰り返しながら走り回るし。何とか入国審査にたどり着いて、因縁つけられたら嫌だな〜って思っていたら、ここは観覧車にでも乗せるみたいにあっさり通してくれた。遂に仏蘭西!空港に迎えは無し…。オペラまでバスで来いとのこと。まずは連絡、キヨスクみたいなところで「ボンジュール、テレホンカード シルブプレ」とやったら買えた。何故か感動した。それからやっぱり荒い運転のバスに揺られてオペラに到着。一仕事終えた、美味い、15時間ぶりの一服を…って火が無い!成田でぶん取られたんだった。とにかく無事に着いた、待ち合わせも出来た、おかげで時差ボケにもなっていない。今「はじめてのおつかい」の子供の気持ちが本当に心から痛いほど解る。

大家仁志
2006年9月29日